今回は本屋大賞3位となった「スモールワールズ」を紹介します!
読もうと思ったきっかけ
素直に書くと、、面白い本がないかなと思いネットで「本屋大賞 文庫本 短編集」で調べるとヒットしました。
一穂ミチさんの作品を今まで読んだこともなく、短編集で合間に読めると思い購入してみました!
この本をおすすめできる人

・読後に驚きを求めている人
・時間を忘れ物語に没頭したい人
・読書に時間をあまり割けない人
読んでみて良かったポイント
①どの物語も展開が予想できない
②人の弱さも強さも書かれている
概要
この作品は7つの物語が収録されている短編集です。文庫本だと「スモールスパークス」が追加されました。どの物語もリアルな心情が細かく描写されており、かなり読みごたえがあります。
🐠ネオンテトラ
⇒主人公:相原美和 子宝に恵まれず家庭や仕事で思い悩む30代モデル業
📚あらすじ
夫の浮気を知りつつも言い出せない中、マンションの玄関先で父親に怒鳴られている少年を目撃する。少年とのささやかな交流が始まり荒んだ心が満たされていくが。。
👧魔王の帰還
⇒主人公:森山鉄二 甲子園出場を目指していた高校野球児
📚あらすじ
後に詳しく紹介します!!
🌳ピクニック
⇒主人公:母親 希和子 娘 瑛里子
📚あらすじ
瑛里子に待望の娘が生まれ、名前は未希。希和子は涙を流し喜びました。未希の子育ては一筋縄ではいかず瑛里子のメンタルも乱れていきます。そんな中でも、希和子は愛情を持って瑛里子と未希のサポートを欠かしません。子育てが少し落ち着き、希和子に未希を預け、瑛里子は単身赴任中だった夫に会いに行きました。久しぶりに夫婦で穏やかに過ごしていると、希和子から電話がかかってきます。
「未希が動かないの、、」 ここから物語は大きく変わり、心情も揺れ動きます。いくつもの出来事を越えこの家族がたどり着いた答えとは。。
🌸花うた
⇒主人公:新堂深雪 兄を殺された30代独身看護師
📚あらすじ
深雪は、加害者(向井秋生)の弁護士からの勧めで秋生と手紙のやりとりをするようになる。最初は、恨みを書きなぐっていたが、徐々にお互いの心情や悩みを打ち明けていく。被害者と加害者の垣根を越えて深雪が選んだ人生の選択とは。。
💛愛を適量
⇒主人公:須崎慎吾 妻と離婚し流れ作業のように高校教師を続ける50代独身男性
📚あらすじ
玄関の前に立っていたのは十数年ぶりに会う髭を生やした娘だった。娘はLGBTでありタイで手術を受けてくることを告げられる。追い出すこともできずタイに行くまで2人の同居生活が始まった。慎吾は、離婚の要因にもなったある事件をきっかけに、人生に対しての意欲もなくなっていたが娘との交流を通して生き方が変わっていく。そんなある日、娘が突然帰らず消えてしまう。電話口で語った娘の本心とは。。
🏫式日
⇒主人公:先輩(名前の記載なし)施設で育ち夜間学校に通う社会人
📚あらすじ
1年ぶりに高校時代の後輩から「父親の葬式に来てくれない?」と電話があった。
葬式に行く準備をしながら後輩との思い出を振り返る。先輩は夜間学校、後輩は普通の高校生活を過ごしていた。偶然、夜と昼で同じ机を使用していた。そこから机の中にメモを残す形でささやかな交流が始まった。1か月も飽きずに続いたので連絡先を伝え休日には遊ぶ関係となった。
そんなある日、後輩からある重大な告白をされる。そこから徐々に連絡を取らなくなっていった。後輩と葬式で再開し、父親の死因は「飛び降り」だと知る。当時はお互いに心の深くに踏み込んでいなかったが、葬式を通してあの日のわだかまりや本心が語られていく。。
🎇スモールスパークス
文庫本化にあたり書き下ろされた1篇です。
⇒主人公:元夫(名前の記載なし)
📚あらすじ
離婚した元妻から元義父の弔い上げに来てくれないかと頼まれる。迷ったが参列を決め16年ぶりに元妻と再開する。無事に法要は済んだが大雨の影響で帰れなくなってしまう。元妻が泊まっているホテルに宿泊することとなる。久しぶりに一緒に過ごした時間の中で、結婚した理由や関係性が紐解かれていく。。
どの物語も小さな世界で必死にもがいて生き抜いていく人間模様が書かれています。
次の物語につながる伏線も散りばめられていて読み返したくなる1冊です。
伏線回収、恋愛、夫婦・親子関係、イヤミス、人生の儚さなどが盛りだくさんにつまっています。
魔王の帰還

今回の物語の中で特に「魔王の帰還」が読了後に爽快感を味わえたので紹介します!
ネタバレを含むのでご注意下さい!
📚あらすじ
森山鉄二は、甲子園出場を目標に日々練習に取り組んでいたが、ある事件をきっかけに野球をやめ転校してしまう。
転校先では事実と異なる噂が広まり同級生からも煙たがられていたが、唯一気にかけてくれる同級生(住谷菜々子)がいた。
そんなある日、結婚していたはずの真央(姉)が実家に帰ってきた。
姉のあだ名は「魔王」。身長188㎝、体重不明。ぬりかべのような背中。総合格闘技にスカウト経験あり。岡山弁を豪快に話す竹を割ったような性格。
鉄二は小さい頃から魔王には一度も逆らえなかった。
体も心も大きい魔王に振り回され、町を案内していると駄菓子屋で店番をしている住谷菜々子と出会う。談笑していると小学生の男の子が小声で菜々子の悪口を言う場面を目撃する。
魔王が一喝。いけないことを正しその場を収めた。
菜々子から家庭のトラブルで転校してきたこと、良からぬ噂が流れてしまい地元や学校で浮いてしまったことを明かされる。
鉄二も前の学校で同級生を守るために先輩へ殴りかかり暴力事件を起こした過去があった。転校先では暴力事件の噂だけが広まり煙たがられていた。
気持ちや境遇が似ており鉄二と菜々子は少しずつ仲良くなっていく。
魔王が駄菓子屋にある金魚すくいにハマり、3人で金魚すくい選手権に参加することとなる。。
訳あり3人衆が金魚すくいを通して交流を深め、かかえていた悩みと向き合い進んでいく物語です!
話の中で特に心に残った場面を紹介してみます。

特にネタバレ注意です!!
心に残った場面
「気持ちで勝つとか負けるとか、あるから」
「スモールワールズ」一穂 ミチ著 株式会社講談社出版(2023/10/13)より引用
菜々子は、間違った噂を訂正して回ることにやる気がでないと鉄二に相談します。
その時に、鉄二は上記の言葉を返します。
菜々子の母親の”何が何でも新しい夫と暮らしていく”という気持ちが菜々子の”ここで楽しく暮らしていく”という気持ちより強く勝ててないんだと思うと説明しています。
気持ちは物理 とも語っています。
鉄二は暴力事件の際に、気持ちで負けた経験があり自分自身にも問いかけているようでした。
”気持ちは物理”はとても腑に落ちる言葉でした。

みなさんも気持ちで勝ったとき負けたときがありませんか?
金魚すくい選手権に参加した根本には、何か1つでも気持ちで勝ちたいという思いがあったんじゃないかと思います。
訳アリ三人衆の物語を読み終え、あらためて心が動いて(勝って)初めて体が動くのだと感じました。
「行こうぜ。ひとつでも勝とうぜ。勝って、勇さんとこ帰れよ」
「スモールワールズ」一穂 ミチ著 株式会社講談社出版(2023/10/13)より引用
鉄二の発言は魔王の過去を知った経緯があるので簡単に解説します。
魔王の夫である勇さん。小柄でひょろっとしており、魔王のくしゃみで吹き飛びそうな風貌。
鉄二にもぎこちなく話しかけてくれとても優しい男性。
ある日、鉄二が姉の部屋で大量の離婚届を発見する。
勇の名前のみ記入されている。
鉄二は、別れを切り出されても相手にしがみつくのは魔王らしくないと不思議に思う。
菜々子と相談し、勇の母親に会いに行くことになる。
母親から、勇は進行性の病で筋肉が徐々に衰え呼吸もできなくなり死んでしまう(おそらくALSだと思います)と伝えられる。看病と介護の負担は大きく離婚には賛成だと。
魔王に経緯を話すと「勇に元気な姿だけを覚えていて欲しいと言われた。わしはどうしたらええ、、」と弱音を聞き、初めて魔王の背中が小さく見えた。
その日から魔王は遠方でアルバイトを始め、金魚すくいの練習には顔を出さなくなった。
上記は金魚すくい選手権当日に鉄二から魔王への言葉です。
前半は鉄二の頼りなさが印象的に書かれていましたが、魔王と勇さんの関係性が明かされていくと姉を思うかっこいい弟に変わっていき引き込まれました。
金魚すくい選手権の結果がどうだったか気になる方は、ぜひ手に取って読んでみて下さい。

最高にスカッとします笑
大丈夫じゃけえ、鉄二、泣くな。姉ちゃんがついとるけえ。
「スモールワールズ」一穂 ミチ著 株式会社講談社出版(2023/10/13)より引用
鉄二が魔王との思い出を振り返っている場面です。
鉄二が小さい頃、スーパーで転び腕を骨折します。魔王は買い物カートへ鉄二を乗せ病院まで爆走した際に、鉄二にかけた言葉です。
短い回想なのですがこの場面に鉄二と魔王(真央)の関係性が詰まっていると思います。
鉄二は憎まれ口を叩きながらも、心の奥では真央を尊敬し感謝していることが伝わってきます。
この回想を読んでから物語を振り返ると鉄二の言葉の背景が分かり、微笑ましく温かい気持ちになります。
また、買い物カートの音が伏線にもなっています。すごいです。
最後に
「魔王の帰還」は金魚すくい選手権を通して、悩み抜き気持ちで勝つ様を教えてくれるとても爽快感がある物語でした。
あえて書かなかったのですが、
「魔王の帰還」の末尾の言葉がとても魔王らしく印象的です。ぜひ読んでみて下さい!!
今回は「魔王の帰還」についてお伝えしましたが、他の物語も小さな世界で必死にもがいて生き抜いていく人間模様が書かれています。感情を揺さぶられ必ず読み返したくなる1冊です。

最後までご覧いただきありがとうございました!
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